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映画『日独裁判官物語』

⁂最高裁判事×印運動推進委員会⁂

司法に関心がある方には必見の映画!『日独裁判官物語』。
グローバルな視点で日本の裁判所を観てみよう!

 映画『日独裁判官物語』では、ドイツの裁判所がかなり自由に取材させているのに対し、日本の裁判所は徹底的に取材を拒否しています。憲法にある裁判の公開の原則を守る気がないとしか思えないほどです。

 

 映画の冒頭でドイツの憲法裁判所の判事がスクーターで出勤しているのに対し、日本の裁判官たちは黒塗りの高級車で出勤しています。

 大半の裁判官は免許証を持たないといいます。法の番人の彼らが交通事故を起こしたり違反したら体裁が悪いからだ、という理由によります。そして、官舎と職場を公用車で往復するだけで、地域社会と接したり、見聞を広めることもないそうです。

 早い話、浮世離れした世間知らずが私たちを裁くわけです。

 

 

 ドイツの現行裁判制度はナチス時代の否定が基になっていると映画で繰り返し述べていますが、それだけではなく、旧東ドイツでは国家保安省による不当な裁判が横行していたこと、さらには中世の宗教戦争や魔女裁判などの暗黒の歴史を反面教師にしているという面もあります。そして、2度も世界大戦の戦場になったため、人権の大切さを切実に感じてもいるようです。

 そのような暗黒裁判の数々と訣別するため、可能な限り多くの市民に裁判への参加を呼びかけることになり、現行制度が定着しました。

 

 日本は明治憲法を作成する際、ドイツの憲法を参考にしています。小国の集まりだったドイツが帝国として統一されて皇帝の権威が強められた時期に制定されたドイツ憲法が、天皇を元首とする明治憲法にとって格好のお手本だったからです。

 19世紀半ばはフランスで裁判員制度が始まった時期に当たり、ドイツにも影響を与えてはいたのですが、帝国時代の風潮によって、裁判員制度の導入に制限が加えられてしまいました。明治憲法や法制度はその時期を参考にしているため、日本の裁判制度でも市民の参加が限られた、閉鎖的なものになっているのです。

 のちにドイツが第一次世界大戦で民主制に移行したものの、悪名高きナチスの時代となり、戦後は民主選挙からナチスが生まれた反省から、市民の監視を強めた現行裁判制度が誕生しました。

 

 そのため、「名誉職裁判官」という制度があります。一般市民が裁判に参加するわけで、日本の裁判員制度に近いものですが、大きく違う点もあります。

 日本の裁判員は有権者の中から抽選で裁判員候補を選ぶわけですが、ドイツの場合は自治体によって選出方法が様々で、組合などから推薦されたり、公募をかけたり、双方を組み合わせる場合もあるそうです。公募の場合は一定の基準を満たした有権者が自分にとって関心のある案件を選択して書類を提出して申請する仕組みになっています。

 名誉職裁判官に採用された人は人望がある人と見なされ、世間から高く評価されるし、任期を全うして退官後は、貢献度に応じて自治体の首長から表彰されたり勲章を授かったりするとのことです。

 

 ドイツでは市民が積極的に裁判に参加する制度なので、裁判官の方も市民活動に積極的に参加し、市民と同じ目線で審議する姿勢を大切にしているといえます。

 裁判官一人一人の政治や宗教に対する信条も明らかにしています。日本の裁判官の非社交的で没個性的な、人間性を否定した姿勢とは対極にあるといえます。政治や宗教等の個人的な理念を法律より優先させないことがドイツの裁判官たちの間で徹底しているからこそできることなのでしょう。

 様々な立場の人々の目があるからこそ、特定の個人の思想信条を優先させないようにできているわけで、日本ではなかなか実現できずにいることです。

 

 また、名誉職裁判官としての経験が当人たちの社会生活や企業イメージの向上に役立つ効果もあります。裁判に関する経験を積むことにもなり、自分が訴えたり訴えられたりする際の知恵を習得できるわけです。

 

 日本とドイツで裁判に対する姿勢自体が根本的に違うということです。

 ドイツは典型的な訴訟社会であり、論理的に議論するのを好む傾向が強そうです。

 訴訟を起こしたり起こされたりしたときに裁判費用を肩代わりする保険会社もあり、多くの人が加入しています。

 

 それに対して日本では、裁判に不慣れな人の方が圧倒的に多いでしょう。費用も目玉が飛び出るほどかかります。

 法律用語にもなじみが薄いし、裁判員や弁護士たちが熱意を持っているとは言い難い状況です。

 

 だからと言って、あなたが裁判に関わったら、これらの困難に否応なく付き合わされるわけです。

 

 そのために、この最悪とも言える状況を改善するためにはどうすべきか、一人一人が真剣に考えねばなりません。何といっても、最大の原因は私たち一人一人の無関心により司法制度を放置していたことにあるのですから。

 公開の原則を守らない裁判所が、公正な審議をするとも思えませんし、当然ながら冤罪も後を絶たないでしょう。

 一方で、死刑制度の是非を問うアンケートでは85%が維持に賛成とあります。と、言うことはこの文章を読む人の大半は死刑制度賛成となるのでしょうが、もし、あなたが冤罪で死刑判決を受けたとしたら、おとなしく死刑執行されるというのでしょうか?

 冤罪で死刑判決を受けたくないのなら、真剣に考えるべきでしょう。袴田巌さんの実例を考えると、絵空事ではないのですから。

 

『日独裁判官物語』のご鑑賞を通じて、裁判の在り方について、多くの人が関心を持ち、国民の手によって司法制度の改善が実現すること切に願っております。

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